はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

迷子のヒナ 251 [迷子のヒナ]

ここはいつからこいつの屋敷になったんだ?

ジャスティンは化粧着姿で現れたパーシヴァルを信じられないといった面持ちで見やった。勧めてもいないのに勝手に腰をおろし、物憂げな溜息を吐くと、喉が渇いたなどとのたまった。

案内してきたホームズの眉がヒクつく。パーシヴァルの厚かましさに呆れているようだが、そもそもなぜこのような姿で邸内をうろつくことを許した?

ジャスティンはホームズに向かって無言のまま頷き、お茶でもなんでも好きなものを持って来てやれと指示をした。ホームズは本当にそれでいいのですかと訴えるように目を見開き、ええ、ええ承知しましたと目を細めてやっと部屋を出て行った。

「君たちは会話をするのに声はいらないようだね」パーシヴァルがおどけて言う。

「俺とお前の間には必要だがな」ジャスティンはぴしゃりと切り捨てた。

「怒っているのか?」

「いいや、怒ってなどいない。ただ何があったのか知りたいだけだ」

パーシヴァルはひょいと肩を竦めた。こんな時でもふざけないと気が済まないらしい。

「そんな顔しないでもらいたいね。僕は随分とひどい目に遭ったんだからさ」拗ねたように唇を尖らせ、パーシヴァルは湿った前髪を指先で弄んだ。

「なぜ、ジェームズを巻き込んだ?」

「それについては本当に申し訳ないと思っている。ジェームズは勘のいい男だから、僕がブライスに連れ去られたと気付いたんだ」

やっぱりブライスが関連していたか。来月には結婚を控えているのに随分と大胆な男だ。

だが――「ジェームズには関わりのない事だ。何かあった時にジェームズに助けに来てくれとでも頼んでおいたのか?」

「うん、まあ、そうとも言えるかな」

なんとも煮え切らない返事だ。頼んだのか頼んでいないのか、どちらにせよジェームズはパーシヴァルを助けに行った。そのことに関して、ジャスティンは不満だった。ジェームズに何かあれば、多かれ少なかれ自分にも影響が出る。それは仕事の面だけではない。なぜならジェームズは家族だからだ。

「で、何があった?お前だけでなくジェームズも酷い目に遭ったのか?」もしそうなら、ブライス共々パーシヴァルを八つ裂きにしてやる。

「まさかっ!そんなはずない。ジェームズには一切手を触れるなとあいつには言っておいたんだ。もしも、もしもあいつがジェームズに何かしていたら、僕はあいつを殺す」パーシヴァルは怒りに声を震わせ、一旦言葉を切った。それからいつもの物憂げな笑みを浮かべようとしたが、こわばった口元を緩めることが出来なかったようだ。諦めたようにほうっと息を吐き出し、事の顛末を話し始めた。

「伯父に会った帰り、うっかり自宅に戻っちゃってさ、待ち伏せしていたブライスに捕まったんだ。馬車に引きずり込まれてナイフを突きつけられて――ナイフだぞ!この僕にそんなものを突き付けるなんてどうかしていると思わないか?でもまああいつの目は血走っていたし、ナイフを突き出している以外は紳士的な態度だったから、抵抗はしなかったけどね」

「少しくらい抵抗していればひどい目に遭わずに済んだのでは?」

ジェームズの冷ややかな声が聞こえ、パーシヴァルは蒼ざめその軽口を閉じた。久しぶりに見るジェームズは、いつも通りの完璧な装いをしていた。もちろん変な匂いもしないし、薄汚れてもいない。

パーシヴァルは崇めるような目で目の前を通り過ぎていくジェームズを見つめている。そんなパーシヴァルの視線をジェームズはあえて無視している。少なくともジャスティンにはそう見えた。

ジャスティンはそんな二人を交互に見ながら、もしかすると二人の関係が思わぬ方向へ進むのではないだろうかと思い始めていた。まったく看過できない予想に、ジャスティンは苦い顔で目の前に立つジェームズを見上げた。

つづく


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迷子のヒナ 252 [迷子のヒナ]

誰にとって都合がよく、誰にとって都合が悪かったのか、とにかくこれほどいいタイミングはなかった。

ホームズがティーセットの乗った銀盆を手に、妙な雰囲気になりつつある書斎へ入って来た。その後ろに隠れるようにして、ヒナがおやつの乗ったお盆を手にしている。本人は隠れているらしいが、朝にはきっちり編んであった髪が、ひらいた傘のように広がっているので、ほっそりとしたホームズの身体から随分とはみ出している。

なので、バレバレだ。

誰がそれを指摘するのか、男三人が困ったように視線を行き来させる。

ジェームズは帰宅を告げる挨拶の途中で、うっかり振り向いてしまったがために、息を呑むのと同時に言葉も呑み込まざるを得なかった。

ジャスティンはジェームズとパーシヴァルの只ならぬ関係について問いただそうと待ち構えていたが、ホームズの陰からヒナがひょっこり伺うように顔を覗かせたことで、質問の内容は吹っ飛んでしまった。

パーシヴァルは我慢できず吹き出してしまった。それもそのはず、ジェームズを恐れて逃げ出して行ったはずのヒナが、恋人に会うため危険を顧みずおやつを持って現れたのだから。

「お茶をお持ちいたしました」と老執事が歳のわりには通る声で告げると、その後ろから「おやつもお持ちしました」と給仕に不慣れとおぼしき声が聞こえた。

今度はホームズさえも吹き出さずにいるのは不可能だったようだ。だがすぐに何事もなかったかのように――ヒナが存在しないかのように――振る舞い、パーシヴァルの後ろにある腰の高さほどの猫足テーブルに盆を置いた。

ホームズが招かれざる客に出すときの真っ白なティーポットから真っ白なティーカップに紅茶を注ぐ間、ヒナはコソコソと椅子の陰に隠れ、おやつの盆を一番近くにある小さな丸い花台に乗せた。

誰もが口をぷるぷると震わせ、ヒナの給仕のまねごとを指摘するべきか否かを逡巡している。

ついに耐え切れなくなったパーシヴァルがうっかり秘密を漏らすような事を口にしてしまう。

「ヒナ、髪は乾いたのかい?」

ヒナはぎょっとし、振り向くパーシヴァルに目を見開いてみせた。それは内緒でしょ!と目が語る。そうだったっけ?とパーシヴァルは目顔で答える。どうやら目で会話するのは、ジャスティンとホームズだけではないらしい。

「ヒナの髪は濡れていません」ヒナがぶっきらぼうに答える。そしてついに存在がばれてしまったと諦め、ジェームズに「おかえりジャム」と声を掛けた。

「ただいま、ヒナ。いつからそこにいたんだい?」ジェームズはわざとらしく尋ね、もじもじするヒナにさも驚いたような顔を向けた。

「いま」と消えりそうな声でヒナは言い、パーシヴァルを盾にして椅子に座った。「今日のおやつはもちもちチーズだよ」とささやき、誰よりも先におやつにかぶりつく。

こんな状況で込み入った話など出来るはずもなく、男四人はテーブルを囲んでのティータイムとあいなった。

つづく


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迷子のヒナ 253 [迷子のヒナ]

好まざる人物を交えてのお茶会が日課のように思えてきた。

ジャスティンはパーシヴァルに擦り寄るヒナに、嫉妬からくる苛立ちを覚えた。ヒナは誰彼かまわず仲良くなり、あまりに自分を無防備に晒す。パーシヴァルごときだが、ジャスティンはヒナの傍に近寄る者を黙って見過ごすほど出来た人間ではない。たとえヒナの方が寄って行ったとしても。

だからすぐさま砦のような書斎机から飛び出し、ヒナをすくい取って、パーシヴァルから離れたソファに腰をおろした。ヒナを膝に乗せはしなかったが、ぴったりと寄り添わせ、隔てたテーブル以上の距離がお前たちの間にはあるのだと、無言で威嚇した。パーシヴァルは特に気にするふうでもなく、紅茶を啜り、おやつをつまみ、優雅な仕草で足を組んだ。

くそっ!なんてことだ!「パーシヴァル、足を組むな。迷惑だ」

ガウンが肌蹴て腿から下の足がむきだしになっているうえ、もうあと数センチ、いや数ミリでパーシヴァルの股間から生えている何かが見えてしまう。その何かとは、当然ヒナが目にしていいものではない。

「迷惑?足を組んで迷惑だなんて――」まったく悪びれる様子も、何かが見えてしまう可能性にも気づかず、パーシヴァルは困ったように眉を顰め、おやつをまたひとつ摘まんだ。

ヒナも身をかがめ、手を伸ばし、おやつのもちもちチーズを手に取る。好物なのか、ホクホクの笑顔でひとつを口に放り込み、もうひとつはティーソーサーに乗せた。「あ、パーシー何か見えてる」

ジャスティンは咄嗟にヒナの目を手で隠した。ヒナはもぞもぞと動き、指の隙間から見てはいけないものを見ようと躍起だ。好奇心もここまでくればたいしたものだ。けれども、ヒナはジャスティンのモノ以外見てはならない。

「どうやら君はまったく懲りていないようだね?あのままあいつのところに置き去りにすべきだったか?」一人離れて立っていたジェームズが厳しい口調で口を挟んだ。

パーシヴァルのハッと息を呑む声が聞こえた。

「ジェームズ。そんなこと言うなよ……ほら、これでいいんだろう?」パーシヴァルは血相を変えて組んでいた足を解き、ぴたりと閉じると、ガウンの前を二度と開くものかと重ねあわせた。

「どうせならきちんと着替えてこい、と言いたいところですが」ジェームズがゆっくりとパーシヴァルの背後にまわる。

パーシヴァルは身体をかすかに震わせ「それは仕方がないだろう?まだ着替えが届いていないんだから」と言い訳がましくぼやいた。

「パーシーここに住むの?」ヒナが突拍子もない事を訊く。

「馬鹿言うなっ!」

こんな貞操観念の低い男が同じ屋根の下に居たら、ヒナに悪影響を及ぼすに決まっている。ヒナ相手に声を荒げる気はなかったが、むろん、自分の仕事のことを棚に上げてはいるが、これはさすがに容認できない。

「そうだよ、ヒナ。彼にはちゃんと住む家があるんだ。とても立派な家がね」ジェームズも静かに同意する。

「でも、使用人は一人もいないけどね」悲しそうに目を伏せ、パーシヴァルはヒナの同情を誘った。

くそっ!こいつがよく使う手だ。これでは単純なヒナは――

「パーシー可哀相……ひとりぽっちなんだって」

まんまと引っ掛かっているではないかっ!このままではヒナは縋るような目でこちらを見上げて、とんでもない『お願い』をしかねない。

そうなったらおしまいだ。

なぜなら、ジャスティンはヒナの頼みを断れないから。

つづく


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迷子のヒナ 254 [迷子のヒナ]

「そういえばヒナ、ほらあのチョコ、可哀相なパーシヴァルに分けてあげたらどうだ?」ジャスティンは苦し紛れにそう言った。
一週間前、ランフォード公爵からもらった高級チョコレートを、ヒナはそれはそれは大事にちびちび味わっている。公爵のチョコなどさっさとなくなってしまえばいい。あれを見るたび、ヒナが公爵を『エディ』などと親しげに呼ぶのを思い出してむかむかするのだ。

「えぇ……」ヒナはあからさまにいやそうな顔をして、なんでそんな余計なこと言うの?とジャスティンに鋭い一瞥を向けた。いつもふわふわしているヒナだが、こういう時だけは捕食者のような顔つきになる。

「あのチョコってなんだい?」何も知らないパーシヴァルがごく自然に尋ねる。

「な、なんでもない。パーシーの口には合わないよ。ヒナ専用だから」まごつくヒナ。だが言い訳の腕は上がったようだ。『ヒナ専用』とは笑わせる。

「そうなの?」物欲しそうな顔でヒナの不安を煽るパーシヴァル。

「そうだよ。あー、ヒナそろそろ部屋へ戻ろうかな。パーシーにもちもちチーズ全部あげるね。じゃあ、バイバイ」ヒナはそう言って、一目散に書斎から出て行った。おそらく部屋へ戻って公爵のチョコを愛でるのだろう。

「君はあの子を上手く追い払ったようだね、ジャスティン」ふふっと笑って、パーシヴァルはヒナから貰ったもちもちチーズを口に運んだ。

ふんっ!ヒナの扱いはここにいる誰よりも心得ている。ジャスティンは妙な対抗意識をパーシヴァルに抱きつつ、もちもちチーズをふたつ、手に取った。

「あっ!それは僕のなのに」とパーシヴァルはヒナみたいな事を言う。

「ここは俺の屋敷だ。お前のものなどひとつもない」

「随分、大人げないな」どちらに向けてか、ジェームズが呆れたように言う。パーシヴァルの座る椅子の背もたれに両手を突き――間にパーシヴァルを挟んで!――「使いが戻ったようだ。着替えてきたら?」と甘ったるい声で耳打ちをした。

それを見ていたジャスティンは吐き気をもよおした。「ジェームズ!気色悪い声を出すなっ」

「こうでも言わないと、クロフト卿は重い腰を上げそうにないからね」ジェームズは手をついたまま肩を竦めた。

「パーシヴァルと呼ぶ約束だろう!」パーシヴァルが叫んだ。

「君とは何ひとつ約束した覚えはないが?」

ジェームズは滑らかな動きで、サッとうしろへ引いた。パーシヴァルが追いすがるように身体をひねって座面から腰を浮かせる。

じゃれついているように見えてしまうのは気のせいか、気のせいじゃないのか?

「お前たち、いったいどうなっている?この一週間何があった?いますぐに説明しないと、お前ら二人ともこの屋敷から追い出すぞ!」

いや、すべてを聞き終えるまでは、絶対に二人を解放するものか。

つづく


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迷子のヒナ 255 [迷子のヒナ]

書斎の窓が開け放たれ、新鮮な空気が取り込まれたが、息苦しくて仕方がなかった。

それもそのはず、これから口にすることはとんでもない事で、おそらく猛反発を食らうからだ。

パーシヴァルはごくりと唾を飲み、遥かうしろで書棚に寄り掛かっているジェームズを意識した。なぜあいつはあんなに離れているんだ?さっきみたいに息のかかる距離にいてくれたらどんなに心強いか。

あの時――ブライスに拘束され監禁され、言うことを聞くまで犯してやると脅され、実際そうされていたあの時――血と汗と体液にまみれ意識の朦朧としていた僕を救ってくれたのは、激したジェームズだった。無感情の冷たさも、甘く誘惑するような打算的な優しさも一切なく、ただ怒っていた。おそらく想像するよりも、すごく。

『君が望んでこうなっているのか?』とジェームズは尋ねた。

どこをどう見ればそういう結論に結びつくのか見当もつかなかった。ベッドの中で血を流した事などこれまで一度もないというのに。馬鹿言うなっ!と怒鳴りつけたかったが、弱弱しく首を振ることしか出来なかった。下手に動くと戒めが身体にくい込んで、また血が流れることになる。

涙が頬を伝った。ジェームズにこんな穢れた忌まわしい姿を見られたくなかった。他の男と交わっている姿をジェームズは幾度となく目にしているだろうが、望んで抱かれるのとそうでないのとでは天と地ほどの差がある。

崇拝され愛でられているときの僕は、うっとりするほど美しい。目の前の怒れるジェームズの神々しさには負けるかもしれないが、誰をも魅了すると自分でも自覚している。堅物ジェームズでさえも、少しくらい僕を抱きたいと思ったことがあるはずだ。

ジェームズは目を閉じていろと僕に命じた。有無を言わせぬ口調にぞくぞくとして、下半身が硬くなった。もちろん目は閉じた。

ジェームズの息が頬にかかった。キスをされると勘違いした愚かな僕は、思わず口を開いてしまった。ジェームズの失笑が聞こえた。温かい指先が優しく目元を拭い、それから憤怒からか震えながら戒めを解いた。

久方ぶりに解放されてホッと息を吐いた。

ブライスに捕まってから四日、ここへ来てからおそらく三日は経っている。ジェームズはすぐに気付いてくれたのだろうか?ここへ辿り着くまでいろんな場所を捜索してくれたのだろうか?それともあの卑劣極まりないブライスがジェームズを呼んだのだろうか?

静かになったので目を開けると、そこにジェームズがいなくてパニックになった。

掠れ声でジェームズの名を呼び、強張る身体を起こして、視線を部屋のあちこちに彷徨わせたがジェームズはどこにもいなかった。

今のはもしかして夢だったのか?そう思った時、部屋にブライスが入って来た。

パーシヴァルは声にならない悲鳴を上げ、力を振り絞って、やみくもに手にした羽枕を投げつけた。予想通り、枕は手から落下しただけだった。

ブライスがクスッと笑った。何とも癪に障る笑い声だった。

『すぐに湯を運ばせる。身体を綺麗にして待っているんだ、パーシヴァル』

ブライスが上機嫌とは言い難い顔つきでそう言った時、ジェームズは幻だったのだと確信した。全身の力が抜け、降参するのがもはや最善だと思えた。『お前が結婚しても喜んで付き合わせて頂く』そう言えば済むのだ。苦痛などなく、付き合っていた頃のように楽しくセックス出来るのだ。出来ないと分かっていても、そう思い込むことは出来る。

目を閉じ、ブライスをジェームズだと思えばいいのだ。この三日間そうだった様に。

つづく


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迷子のヒナ 256 [迷子のヒナ]

『長くはかからない。客人と話をつけてくるから、いい子で待っているんだよ。愛しのパーシヴァル』

ブライスはパーシヴァルのかさかさの唇に口づけ狂った瞳で見おろした。パーシヴァルには客人とやらが誰を指すのかすぐにわかった。

ああ、ジェームズは幻じゃなかったんだ。僕を助けに来てくれた。

パーシヴァルの心に光が差し込んだ。
なにが愛しのパーシヴァルだ!こいつの勿体ぶったいやらしい喋り方には反吐が出る。

身を翻し部屋を出て行こうとするブライスの背に、パーシヴァルは声を振り絞って警告した。

『ジェームズに手を出したら許さないからな』

ブライスはぴたりと足を止め、嫌味なほどゆったりと振り返った。

『ジェームズ?ああ、彼のことか……。ずいぶん親しげに名を呼ぶものだな?もう君の身体を味わわせてやったのか、あの卑しい男に』嘲るように言い捨て、ブライスは部屋を出て行った。

すさまじい怒りがパーシヴァルの身体を貫いた。絶対にブライスを許すものか。もしも無事にここを出ることが出来たなら、あらゆる手段を使い、ブライスをこの世界から排除してやる。

この数日の屈辱が寝起きに冷めた紅茶を出された程度の些末な出来事に思えるほど、ジェームズへの侮辱はパーシヴァルそのものを蹂躙した。

パーシヴァルは失いかけていた自尊心をにわかに取り戻し、圧倒的な優雅さでもって、ベッドからおりた。いつまでもこんなところで腐っている場合ではない。

ブライスはすぐに戻ってくると言った。ジェームズもそのつもりだろう。わざわざここへ乗り込んできたからには、ジェームズがブライスに屈するはずがない。必ず僕を救ってくれるはずだ。

けれども待てど暮らせどジェームズもブライスも戻ってこなかった。これまでと同じで、部屋の外には腕力では到底太刀打ちできそうにもない見張りが二人もいて、ドアを開け様子を伺うことすら出来ない。

ジェームズはブライスとどんな話を?まさか話し合いでは決着がつかず、あの魅惑的な身体を差し出しているのでは?まさかっ!まさかっ!ダメだそんなの。

パーシヴァルはまたしてもパニックに陥った。この屋敷には腕力のみの脳みそのない下男が掃いて捨てるほどいる。ブライスが一言命じれば、やつらがジェームズを拘束して好き勝手にすることなど他愛もない。

そうしてジェームズ共々、僕はまたブライスを受け入れさせられ、無理矢理引き出される快楽の奴隷になるのだ。

いやだ。言いなりになどなりたくない。
付き合っていた頃の物分かりのいい伊達男はどこへ行ってしまったのだろうか?ブライスは気さくで愛想がよく、セックスの相性もそこそこよく、僕だけを崇拝し愛してくれていた。僕の身体を愛してくれる者はいくらでもいたが、僕そのものを愛してくれたのはブライスが初めてだった。

いま思えば、それはすべて幻想だったのかもしれない。ブライスは僕に負けず劣らず、自分を愛する性質の人間だ。

長い時間が過ぎた。
入浴し、食事もし、体力を回復させるだけの時間を与えられ、数回に渡る浅い眠りから目覚めた時、ドアを開けたのはジェームズだった。

疲れたような顔をしてはいたが、そして少し怒っているようにも見えたが、ジェームズはまっすぐにこちらに向かってきて、それから言った。

『帰るぞ』

つづく


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迷子のヒナ 257 [迷子のヒナ]

「どうやってブライスを納得させたんだ?」永遠にブライスの面を見なくても済むのか、それとも一時的なものなのか、パーシヴァルはどうしても知りたかった。

帰り道、何度か同じ質問をしたがその度にはぐらかされた。すべてを知りたがっているジャスティンがこの場にいるいまなら、ジェームズも答えてくれるかもしれない。

ジェームズは書棚に寄り掛かったまま肩を竦めただけで、答えようとはしなかった。

パーシヴァルは前に向き直り、ジャスティンに目で訴えた。ジェームズの口を割らせることが出来るのは君だけだと。

だがジャスティンは自分が知りたい事を聞きたい性質だ。だから突然「なんでこいつをうちに連れて来た」などと言ったとしても、ごく自然なことなのだ。

「ちょっ、迷惑そうに言うことないだろう?」パーシヴァルはムッとして返した。たとえいまの質問の行く先が、自分の一番知りたい事だったとしても、あからさまに邪険にされるのには我慢できない。

「実際迷惑だ」

くそうっ。

「迷惑ついでに言うが、僕をここに置いてくれないか?」ああ、とうとう言ってしまった。ヒナが助け舟を出してくれた時はしめたと思ったが、さっきはもうあとひと押しが足りなかった。

「断る!」

にべもなく言われ、パーシヴァルはあっけにとられた。あまりの即断、即答。少しくらい迷う振りをしてくれてもいいじゃないか!僕には帰る家もないし――家はあるが誰もいない――いつまたブライスが襲ってくるか分からないというのに。

「頼むよ。空いている部屋があるのはわかっているんだ。きちんと賃料も払うし……そうだ、ほら!ヒナの面倒だってみてあげられる。どうだ?」

「ヒナには近づくな」ジャスティンは喉の奥から唸り声を漏らした。

「近づかなきゃいいのか?」パーシヴァルはむきになって言い返した。

「いいわけないだろ?自分の屋敷へ戻りたくないなら、いつまでもクラブに居座っていればいい」

「もう、あそこにはいかない。やめるよ」

「やめる?」ジャスティンが頓狂な声を出し、わずかに腰を浮かせた。かなり驚いたようだ。

「そうだ。退会する。もちろん、やめたからといって、クラブの秘密を漏らすような馬鹿なまねはしないさ」パーシヴァルは心底疲れた溜息を洩らした。なにもかもうんざりだった。混沌とした世界に身を沈め、現実から逃れるのはもうやめにしたかった。ブライスが狂気に陥ったのも、もとはといえば自分のせいだ。

「ジャスティン、クロフト卿の退会については少し話し合う必要があるな」ジェームズがやっと口を開いた。「ついでに言わせてもらえば、彼を無下に扱えばヒナが黙ってはいないだろう。しばらくここに置いてやってはどうだ?新しい使用人が見つかるまで」

「ジェームズっ!」パーシヴァルは歓喜の声をあげた。身体がこわばっていなければ、すぐさまジェームズに駆け寄り飛びついているところだ。称賛の眼差ししか送れないのが残念でならない。

「どうしてそこまでしてやらなければいけない?」
ジャスティンはなおも不満そうだ。けれどヒナの不興を買いたくないから、もうまもなく渋々でも了承するはずだ。

「なぜでしょうね?」ジェームズは自分でも分からないといった様子で、パーシヴァルを見つめ返した。

「僕が好きだからだろう?」精一杯冗談めかして言ったが、そうであって欲しいという気持ちが声を震わせた。期待させたのはジェームズだ。もしも冗談でも本気でも否定の言葉を口にされたら、きっと泣き出してしまう。

「そうかもしれませんね」

冗談とも本気ともつかない高慢な返事だったが、とにかくパーシヴァルは泣かずに済んだ。

つづく


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迷子のヒナ 258 [迷子のヒナ]

パーシヴァルがホームズに連れられ書斎を出て行くと、ジェームズは命じられる前にジャスティンの前の席に着いた。そこはまだパーシヴァルの温もりが残っていて、ジェームズは居心地悪げに尻を少し横へずらした。

「言っておくが、俺はあの男が連れ去られたというところまでしか知らないからな。それを踏まえてわかりやすく簡潔に説明するんだ」ジャスティンは顎をくいとあげ、ジェームズを見下ろすようにねめつけた。

「もっと穏やかな言い方は出来ないのか?僕は疲れているんだ」ジェームズは長い溜息を吐いた。

「偉そうな口をきくな。お前が頼んだからあいつをここへ置くことを了承したんだぞ」

「はいはい」まったく。よそよそしければ文句を言い、家族のように振る舞えば偉そうなどと言う。ヒナのせいでどんどん扱いにくくなる。

ジェームズは咳払いをして居ずまいを正した。確かに今回のことについてジャスティンは説明を受ける権利がある。
なにより順を追って話すことで、なぜ自分がパーシヴァルを探しに出掛け、取り戻す必要があったのかがわかるかもしれない。少なからず自分を犠牲にしてまでそうした理由が知りたかった。

ジェームズは口を切った。
「クラブにいる限りは安全だと保障したんだ。それなのに連れ去られた――」

ジャスティンは軽く手をあげ、ジェームズの言葉を遮った。「あいつは自分の屋敷の前でさらわれたと言っていたぞ」そう言ってソファに背を預け腕を組む。

「知っている。てっきりクラブの前でだと思ったんだ」とんだ勘違いをしたものだ。だが結局はパーシヴァルを探してブライスの足跡を追っただろう。

「だとしたら誰か見ていたに決まっているだろう?うちは正面玄関だけでなく、通りの端まで目を配っているんだぞ」

やけに正論をぶつけてくるジャスティンは、どこか面白がっているように見える。ジェームズは柄にもなく頬を熱くし、非難がましい目をジャスティンに向けた。からかうのはあとにしろ、と。

「何事にも絶対はないだろう?もしかしたらということもある。それで、とにかく僕は自分の責任を果たすために、パーシヴァルが無事かどうか確かめようとした。結果……無事ではなかったけどね」

ジェームズは街中血眼になってパーシヴァルを探し回った事はあえて口にしなかった。ジャスティンがそのくらい見当をつけているのは、にやついた口元を見ればわかる。

ジェームズは話を続けた。

「ブライスはロンドンを離れていた。丸一日かけてあいつの屋敷に辿り着いたが、門前払いを食らった。用心棒が門の外と中とで守りを固めていて、取り次いでもらうまでに半日かかった。この辺は端折ってもいいか?とにかくあいつはいけ好かない――いや、いかれた野郎だったよ。わざわざベッドに縛り付けられたパーシヴァルと対面させ、その様子を見て喜ぶような変態だ」あの時の場面は脳裏に焼き付いている。おそらく一生忘れられないだろう。パーシヴァルの光りを失った瞳は、どれだけ心身ともに痛めつけられたのかを物語っていた。

「俺は前からあいつのことが気にくわなかった。気取り屋のいけ好かない野郎なのは間違いないな」ジャスティンは語気を強め同意した。

「パーシヴァルが好きで縛り付けられているのなら、そのまま帰ろうと思った。だが彼は縛られるのを好むような男ではない」

「その通りだ。自由を愛する」

「――で、そもそもブライスがパーシヴァルを連れ去ったという事実には目を伏せ、僕は紳士的に彼を取り戻そうとした。話し合いで」

それは、それは、長い話し合いになった。丸一日近く掛かったのではないだろうか?あの時は時間の感覚が無くなっていたうえ、話の通じないブライスに癇癪をおこして爆発寸前だったのだ。念のために携帯していた銃で撃ち殺してやりたかったほどだ。

「パーシヴァルも言っていたが、どうやってブライスを説き伏せたんだ?」

「最終的には、僕があいつの結婚をぶち壊すほどの力を持っていることを証明したのさ。ブライスの結婚相手が誰だか知っているだろう?」

「ブルーアー家の一番地味な娘だろう?」

「そう、そしてその母親は僕が唯一持っている切り札だ」

そして忘れてしまいたい過去でもあった。

つづく


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迷子のヒナ 259 [迷子のヒナ]

「ブルーアー夫人との事を喋ったのか?」

ジャスティンは信じられない気持ちでそう尋ねた。

まったく信じられなかった。
ジェームズを蝕む過去の大元――ブルーアー夫人。

現在、ジェームズと彼女が顔を合わすことも手紙を交わすこともないはずだ。それなのに、いったい何ができるというのだ?

「夫人の名誉にかかわることは口にしていない。ただ、僕は彼女のお気に入りで、ブライスの言うことよりも僕の言うことの方を信じる、そう教えてやったさ」ジェームズは苛々と髪をかきあげた。どうやらこの話をさっさと済ませたがっているようだ。

「ふんっ!お気に入りだと?ずいぶん控えめな表現だな?あの女との過去をほじくり返してまで、パーシヴァルを助ける必要があったのか?あいつはこれまで大なり小なり問題ばかり起こしてきた。それをいまさら、たかだか別れ話がもつれただけで――」

「あいつは卑劣な男だ!誰であろうと、あんな仕打ちを受けるいわれはない」ジェームズは息を乱しさえぎった。「僕はあの女の愛人だった?しもべだった?それとも、奴隷だったとでも言えばいいのか?一〇年経った今でも、僕が彼女のお気に入りなのがおかしいか?それともそう思っている僕がおかしいか?いいや、おかしくなんかない。証明してやろうか?」

「もういいっ!わかった。わかったから、やめるんだ」

なんとかしてジェームズを止めたかった。けれども暗い記憶を現在へと呼び戻してしまった代償は大きかったようで、ジェームズの美しい青い瞳は苦痛の色に染まり、いまにも泣き出してしまいそうだった。

ジェームズは親に売られたと同時に、ブルーアー夫人の愛妾となった。まだ十三歳だった。十五歳でジャスティンの父に引き取られるまでの二年間、夫人はジェームズを片時も離さなかったそうだ。ジェームズが女に対して嫌悪に近い怯えを抱いているのはそのせいだった。

いくら愛の行為でも、強制されてしまえば、それは虐待だと言わざるを得ない。

「ジャスティン……僕はまだ彼女の味を覚えているんだよ」ジェームズは切なげに目を伏せ、囁くように言った。

すんでのところでバランスを保っていたジェームズの心は崩壊しかけている。ジャスティンは大きく息を吸った。パーシヴァルの為にジェームズがおかしくなるのを黙って見ていられるか。

「ジェームズ、よく聞け。お前はもう彼女とは何の関係もない。お前が彼女に対して力を振えると思っているのは間違いだ。お前がブライスを破滅させようと彼女に口添えしたとしても、その後ろで力を発揮する人間がいる事を忘れるな。彼女に対して力を持つのは俺の父だ。だから自分でどうにかしようとはせず、まずは俺に相談しろ。そして必要なら父の力を借りる」

ジャスティンはいつもに増して尊大な態度で言ってきかせた。放っておけば、ジェームズは自分の身体を差し出しかねない。父に頭を下げるのは容易い事ではないが、やって出来ない事ではないし、ジェームズを失うことを思えば価値のあることにすら思える。

「わかったか」ジャスティンは念を押した。

ジェームズはジャスティンの言葉に驚いたようで、潤んだ眼を大きく見開いている。それから無理に笑おうとしてか、口の端をひくつかせた。のどの奥から掠れた呻き声のようなものと共に「信じていないんだな」と言って、ふっと笑った。

信じているとも。

ジャスティンは心の内で囁いた。

つづく


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迷子のヒナ 260 [迷子のヒナ]

「すまない」ジェームズは呟いた。

まったくらしくなかった。こんなに感情を高ぶらせたのはいつ以来だろうか?

ジャスティンのそばにいる事で自分を抑えるすべをすっかり身につけたと思っていたのだが、この一週間を思い返してみるだけでも、それが間違っていたと認めざるを得ない。

一〇年かけて築いた堅牢な壁は、ひとりの魅力的な男によってあっさり崩されてしまったようだ。魅力的だと!いま僕はパーシヴァルを魅力的だと思ったのか?ジェームズは茫然とかぶりを振った。いや、魅力的なのはパーシヴァルのことではない。断じて!だったらいま自分の頭の中を占めているのは誰だというのだ?破天荒なヒナか?いいや、あの子に苛々させられることはあっても、頭の片隅にさえ存在させたことはない。魅力的などと思うはずがない。

ああ、ジャスティンのことに決まっている。ジャスティンは初めてその姿を目にした時から僕の心を占めていた。過去を知っても、嫌悪も同情もみせず、まるで無関心かのような態度で接し、僕が傍に仕えることを許してくれた。

あの当時、ジャスティンの無関心さをどれだけありがたいと思ったことか。

「ジェームズ。おい!」

ジャスティンの声に、ジェームズは物思いから覚めた。顔をあげるとジャスティンがムッとしてこちらを見ていた。ジェームズは狼狽しているのを悟られまいと目を伏せた。

「嫌がっても無駄だからな。いまのは命令だ」ジャスティンはきっぱりと言った。

「命令……?嫌がっても、って」ジェームズは眉を顰め、訊きかえした。どうやらぼんやりしている間に大事な話を聞き逃したようだ。

「仕事などという言い訳は通用しないからな」念を押すジャスティン。

「いったい何の話だ?」ジェームズはとうとう尋ねた。

「聞いていなかった振りをするのはやめろ。今晩からかならず夕食の席に着いてもらう。俺はヒナの面倒で手一杯だ。パーシヴァルはお前がしっかり面倒を見ろ。手を抜いたら承知しないからな」もしもすっぽかしたら撃ち殺してやると言わんばかりに、ジャスティンは捲し立てた。

「なぜ僕がパーシヴァルの面倒を?」そう言い返して笑いたくなった。他に誰がみるというのだ。もちろん僕の役目に決まっている。けれど出来ればあまり関わりたくなかった。これ以上は。

「お前の手に負えない事は分かっている。お前だってあいつの手には負えない。とにかくこれ以上俺の手を煩わせるな。それでなくともやることがいっぱいあるというのに」ジャスティンは額に片手を当て、ぐったりと溜息を吐いた。

ジャスティンの気掛かりはおそらくクラブの今後の経営方針だろう。もしかするとヒナのためにクラブを閉鎖しかねない。それだけは避けたい。これまでのすべてを否定されるようで、存在自体を拒絶されるようで、到底看過できることではない。ジャスティンがやめるというなら、僕が引き継ぐまでだ。

おいおい、僕が引き継ぐだと?いったい僕はどうしてしまったんだ?これまで一度だってそんなこと考えた事はなかったのに。くそっ!パーシヴァルのせいで何もかもが狂ってしまった。

これ以上おかしくなる前に――どう考えてもこれ以上はおかしくなりようがなかったが――、そしてこのおかしな姿をジャスティンに見られないように、出来るだけ早く頭と身体を休める必要がある。

ジェームズは夕食には必ず姿を見せると約束して、急いで書斎を後にした。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。
なんだかジェームズが荒れに荒れちゃって……ジャスティンみたいになってる

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